議会づくり

お金からみる地方議員の位置づけ

一般会計予算の1%を議会費に

2000年4月に施行された地方分権一括法により、国と地方は対等、協力の関係とされ、地方自治体が自己決定、自己責任の原則で運営される分権時代が到来し、地方議会もそれまでの脇役的存在から、自治体運営の主役としてその役割はより重要なものとなってきていると書かれている。しかし、住民の地方議会に対する声としては、「議員は何をしているのが見えない」、「議員の数が多すぎる。報酬が高すぎる」等が聞こえてくる。
一方今後の議員に求められる役割は、「住民の提言を政策化する調整と提案の能力、地域デザイン構想者としての提案と討議の能力、監視の能力をそれぞれ有して活動する。これらの一連の過程には、市民的感覚という市民性とともに専門的能力を持つ専門性が必要となる。(江藤俊昭著・図解地方議員改革実践のポイント100)」が、ますます重要になる。そこで、このような議員を市民の手で創りあげるための「お金」として、「一般会計予算の1%を議会費に」と提案するものである。以下議員の質を担保する議会費として議員報酬、政務活動費や、その他議会費として活用すべき事項や新設について考察してみたい。

3つの視点で考えてみる

「議員報酬」の視点

議員報酬は、生活給ではないとされている。地方議会からは、国会議員と同じ「歳費」と改め、議員の活動すべてを支給対象とすべきとの要望を行ってはいるが、平成20年の地方自治法203条の改正で非常勤職員の報酬規定から分離され、議員報酬という項に改められただけで、いまだどこまでが支給対象であるかは明確ではない。 誰でも議員になる事ができる現在の選挙制度において、多様な階層の住民が議員になって活動ができるような地方議会の環境を整備するためにも、議員の身分保障として、議員報酬は「支給しなければならない」ものである。 議員活動を基準にして報酬を決定しようとの考え方もあるが、多様な議員活動から導き出せるものではなく、議員報酬は、生活費として保障すべきである。

「政務活動費」の視点

2012年の地方自治法の一部改正により、これまでの政務調査費について、名称を政務活動費に、交付目的を「議員の調査研究その他の活動に資するため」に改め、政務活動費を充てることができる経費の範囲を条例で定めることとし、議長は、政務活動費について、その使途の透明性の確保に努めることとした。 政務活動費は、議員活動に使える費用として市民が、個々の議員に支出するお金ととらえている。したがって、会派への交付か、議員個人への交付かではなく、当選した時点で、市民が議員活動を支える費用として保障するものであり、会派を結成した時は、議員の政務活動費の中から、条例に定めるところにより出し合って活動すればよい。 政策課題の検討から立案化、市民との意見交換や提出された議案に関する判断材料の収集や分析、評価などを行う上での外部有識者の意見聴取や専門調査員の採用等々、議会の政策形成機能強化のために政務活動費は大変重要である。 これまでの政務調査費はガイドラインよって使途基準を定めており、「使い勝手」が窮屈だと言われていた。今回改正の使途の透明性確保については、1円からの領収書又はこれに準ずる書類の添付はもとより、これらの公開、ホームページにおける閲覧情報の掲載、活動結果の公表などは、当然行うべきことである。この前提にたって、条例で定めることとなった政務活動費を充てることができる経費の範囲内で、各々の議員が自らの判断で使えるようにすべきであると考える。

「議会費」活用の視点

千葉県成田市の一般会決算総額に占める議会費のうち、議会事務局職員(全員市職員)の人件費を除いた「直接議員活動にかかった経費」の構成比である。平成22年度に比べ平成23、24年度が大きくなっているのは、地方議員年金制度の廃止に伴う「全国市議会議員共済給付費負担金」の増加である。そこで議会費全体を考える時、議員報酬、政務活動費とともに下記の視点を考えてみたい。

議会費を考える上で重要なポイントのひとつに、議会事務局改革の一環としての事務局職員の独自採用が揚げられる。これまでの議会事務局職員は、市の職員とし採用され、市の人事ローテーションで配属されてきており、議会の議事機能をこなすことが主な職務となっているところが残念ながら大半である。今後議員の持つ議案提出権をより多く行使するためには、議員を補佐する議会事務局の調査能力や法制部門の充実がより必要となってくる。
そこで現実的な施策として、市の職員とは別に弁護士・税理士や他市の議会事務局のOB職員等を、議員の任期である4年を原則とする任期付職員として独自に採用することも一つの考えである。その他、事務局機能の改革として、大学をはじめ専門機関との協定等も進める時である。これらを実施するためには、議会事務局設置条例を制定し、事務局機能の位置づけ、職員の定数、議長の人事権、独自職員採用のルール等を整備することが必要である。また、議会費の予算作成、決算等については議長を中心に議員が率先して行うべきである。
多くの議会で自主規制している海外視察について、成田市議会では、特別旅費(行政視察)に海外視察費を計上している。(平成23年度は東日本大震災で中止。)日本最大の国際空港を有する市議会として、東アジアをはじめ世界の主要空港所在地の都市づくりの研修は主な事業のひとつととらえている。TPP問題等々、国からの指導を待つのではなく、地方自ら海外に出ていく時である。国内、海外を問わず、バーチュールな時代になればなるほど直接現地に足を運び学ぶことは、議員の政策立案能力向上のための必須である。

「議員退職金制度」の新設を!!

議会費の中に新設すべきものとして、議員退職金制度を揚げたい。全国市議会議長会の「議員の兼業の状況調べ」によると、議員専業が全体の36.4%を占め最多となっている。二元代表制の一翼を担う議会人を目指せば目指すほど、今後ますます議員専業が多くなることが予想される。議員特権と言われていた地方議員年金制度が廃止された今日、多様な階層の住民が議員にチャレンジしやすい環境整備としてこの制度を提案するものである。4年に一度の選挙において落選という状況も考えなければならない。そこで、首長の退職金制度を参考に、4年間の議員活動に対する退職金制度を検討したいものである。

「地方公職選挙法」の確立を!!

今回は議会費からみた議員活動を考えてみたが、「議員とお金」をみると選挙から日常の議員活動、政党活動等々、多様な費用が必要となっている。ネット社会と言われる時代を迎え、これまでの画一的な公職選挙法ではなく、お金をはじめ今の時代にあった選挙制度として地方独自の「地方公職選挙法」の確立を目指さなければならないと提起し結びとする。 (文責:成田市議会議員 宇都宮高明)

「議員の議案提案権機能の向上を目指して!!」

地方議会の議案提案権は、原則として首長と議員にあります。予算を除き議員は、定数の12分の1以上の連署によって議案を提案することができます。しかし、多くの自治体では、首長の提出した議案の賛否を問うだけの議会になっており、本来議員の仕事に含まれている議案提案が機能していません。なぜ機能しないのかを考えてみますと、提案権の多くが首長にあることや、議員もそれに依存している状況が挙げられます。 一方、提案を積極的に行おうとすると、議員個人の力に頼らざるを得ない現況であり、自らのアイデアを具体的かすべき議会の補佐部門の不足が考えられます。そこで、地方分権をより進めるためにも、議員の立法活動をバックアップする機関として、国の法制局の地方版の設置が必要です。考えていきます。

PDCAサイクルで検証する、NARITAみらいプラン

令和2年度は、成田市総合計画「NARITAみらいプラン」の第2期基本計画︵令和2年度から令和5年度︶の初年度として、新たな4年間の目標や取組方針が示されました。政友クラブとしては、これらに対して短期、中期政策を取りまとめ市に提出し実現に向けて努力しているところです。 令和2年度としてまずは、昨年の台風災害の教訓を踏まえ「災害に強いまちづくり」の中で、公共施設等への自家発電機の整備をはじめ機能的な地域防災計画への見直しを今年の台風時期前に行うことを提案し、市として本年6月を目途に計画の修正に取り組むとの回答を得ています。現在の新型肺炎対策についても、国際空港を有する市としての継続的な対応を求めているところです。 基本計画の推進においては、少子高齢化対策をはじめ空港の更なる機能強化に伴う騒音問題と都市づくり、国家戦略特区である医学部新設と大学病院の開院、新生成田市場等々他市にはない大型事業が同時並行的に進んでいる状況において、日々の市民生活において市民の方々が「安心して暮らせる」市政運営を行っていかなければなりません。 大学医学部等新設には、成田市125億円、千葉県が35億円を補助し、大学側は大学と4月に開院した大学付属病院を含めて約1000億円を投入しています。来年夏頃の開場を目指している新生成田市場においては、現市場の2018年度の取扱高51億円に対して、開場から5年後の2026年度、189億円の取扱高を目指すと計画されています。これらの施策が実施される過程において、常に進行状況等の評価・検証を行う必要があります。 そこで、進行管理の手法である※「PDCAサイクル」に基づき、適切な市政運営を行っていくことが、二元代表制の一翼を担う議会に求められている責任であると考えます。

これまでの政策レポートでも議会について取り上げてきました

 これまで様々な対談をさせていただき、知見を深めてまいりました。

地域を担う地方自治づくり

政策立案機能の強化

大学との提携、職員の出向研修や外部人材の登用

地方財政の検証

少子化・高齢化を見据えての地方財政の検証

行政業務の民間活用の検討

行政業務の民間活用の検討

地方公職選挙法の研究

地方公職選挙法の研究
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